未分化型初期胃がんからの帰還

2015.5.14の未分化型胃がん発覚から入院・手術・退院まで あっという間の6週間の日誌です。同じ経験をされる方の参考になれば幸いです。古い記事を頭に持ってくるためにブログの日付が逆行しています。ご容赦ください。5年間は年2回ペースで投稿します。

9,入院当日 2015年6月9日(火)

朝、子どもたちを送り出して家内と車に荷物一式を積んで病院に向かう。
 
玄関でカート一つでは足りずまごまごしていると、ガードマンの方がすぐもう一つ持ってきてくださる。
 
正門から入り、指示されていたとおり受付を通さず総合サポートセンターへ。
 
入院患者はここで受け付けてもらうことになっているようだ。
 
保険証や認定証を渡し、書類に必要事項などを書き込み、病室に案内される。
 
平野を望む素晴らしい眺望の部屋だ。
 
入院給付金が結構出る生保に入っていたので、個室をお願いしていた。
 
集団生活が苦手なこと、給付金を使い余すのも縁起が悪いなというゲン担ぎと、めったにない機会だからという野次馬根性が加わっての決断だ。
 
一応社長なので、お見舞いに来る方へのミエもある(ま、結局ミエを張るようなお客は来なかったのだが)。
 
荷物を片付けていると、看護師長のTさん、その日の担当看護師Aさんが来て、入院期間中の過ごし方などを教えて頂く。
 
合間を見て、葬祭会館やお寺と母の初盆の打ち合わせをしたり、貸している義父母の建てた家の下水故障の修理お願いだとかの電話をする。
 
お昼の食事はもちろんぺろりと平らげ、その後歯科の検査がある。
 
歯のばい菌が、術後肺に入って肺炎になることがあるそうで、丁寧にクリーニングして頂く。親知らずが一本真横に生えて歯茎の中にあることも分かった。
 
そのあと、手術の流れと麻酔の説明と各々の同意書へのサイン。
 
手術は兼ねて説明があったとおり、「腹腔鏡下幽門側胃切除」。
 
手術時間は4時間ほど、麻酔の前後でプラス60〜90分とのこと。
 
お腹に5箇所切れ目を入れて、そこからいろんな機械を入れて胃の下側2/3を切り取り、十二指腸と吻合。
 
もし開けてみて、噴門側(上の方)も思わしくなければ、胃を全部切除。
 
その場合は、十二指腸は動脈とくっついていてそんなに引っ張れないため、小腸を(切って引っ張ってきて)胃に直接つなげ、離れ小島となった(膵臓と直結した)十二指腸を行き止まりみたいに途中につなげることになるとのこと。
 
全身麻酔は、普通の睡眠などよりも深い状態になるので自発呼吸すら出来ないそうだ。
 
その間は気管に空気を送るチューブを挿入しての人工呼吸になる。
 
麻酔から目が覚めた時、自発呼吸してないのにびっくりしてパニックになる人がいるので注意するようにとのこと。
 
事前に麻酔による死亡のリスクも説明されるから、「あ いってしまった」と思うのかな。
 
なんとなく気持ちはわかる。
 
静脈の注射の前に、硬膜外麻酔といって背骨に管を入れる麻酔をするそうだ。
 
これは痛そう・・
 
20才の頃、交通事故で鎖骨を折り、その手術で全身麻酔を受けたその時は、硬膜外麻酔もなかったし、目が覚めたら気管には何も入ってなかったような気がする。
 
色々進歩しているのだろう。
 
この病院は完全看護のため夜間の付き添いが出来ないので、夕方家内が帰る。
 
することがないので、持参した大型ヘッドホンで音楽を聞きながら、今後の予定表など眺めていると看護師さんがふたり来て、除毛とおへその穴の消毒をしてくれる。
 
除毛は私の慎ましいギャランドゥをトリマーで切っただけだが、おへその方はやたら熱心にゴマをとって、さらに消毒薬「イソジン」のゼリーをたっぷりと塗りこみ、透明な正方形のシールをしていった。
 
あとで見てみるとゼリーがはみ出そうに詰まっていて、まるでチョココロネのような状態になっていた。
 
夕食を食べ、風呂にはいるともうすることがない。
 
消灯時間になったが、ここは個室の特権、家内のiPhoneに電話をして、フェイスタイムで家族の顔を見て話をする。
 
初めて使うが、これはなかなか便利。
 
10時ごろ就寝しようと電気を消す。
 
室内が寒く、タオルケット一枚ではなかなか寝付けない。しばらく我慢してたが鼻水が出てくる。
 
ナースコールしようかと思うが、「こんなことで」と気が引ける。
 
手術当日に風邪をひくわけにもいかないと心を励ましボタンを押すと、1分もせずに看護師さんが来てくれ、嫌な顔ひとつせず毛布を持ってきてくれた。
 
お陰で翌日の朝6時までぐっすりと寝ることが出来た。
 
その後も看護師さん達からは、「どんな小さなことでも呼んでいいんですよ」と何回か言って頂くのだが、この「こんなことで」という気持ちは結局退院まで抜けなかった。