0.プロローグ 2015年7月9日(木)
「はい、傷跡の治りも良好ですね。」
診察台から降りた私にK3先生は明るく続けた。
「切り取ったところの病理検査も問題なし。がん細胞は一番表層の粘膜部分にしかありませんでしたよ。一緒に切除したリンパ節もOK。ステージⅠというレベルでしたね。5年生存率は100%と言っていいでしょう。」
ある程度(希望とともに)予測していた結果ではあったが、やはりホッとする。
「あのー もう胃がんにはかからないってことですか?」
「いやいやいや 3分の1残った胃には、普通の方と同じ発がんリスクはありますからね(笑)。」
「あ もちろんそうですよね。」
「一応 半年後にCT取って、あとは毎年胃カメラ検査受けてくださいね。それでは!」
10分ほどで診察室を出され、僕は会計窓口のある1階への階段をとぼとぼと降りた。
まだちょっと切ったところが痛むのである。
とはいえ、5月に胃カメラ検査を元にガン宣告を受けてから2ヶ月弱。やっと肩の荷が降りた気分だ。
こんな自分の短い経験でも、誰かの役に立つかもしれない。
小瀧壺太郎 54歳
地方都市で小さな会社を営む中年男が胃カメラ検査で見つかった未分化型胃がんと向き合った経験を綴ってみようと思う。